医学部卒業後、内科医として現在も多くの患者の診療にあたっている。
内科の範疇に留まらず、皮膚のトラブルに関しても子供からお年寄りまで様々な症例の診療経験有り。
美白効果が期待される成分として、ハイドロキノンに関心のある方も多いのではないでしょうか。
しかし、闇雲に手を出してしまうには少々危険かもしれません。
ここでは、女性の心を掴んで離さないハイドロキノンの恩恵を安全に受けていただくため、その効果と副作用を徹底解説いたしました。
この記事が、あなたの美しさを保つ一助となれば幸いです。
[getpost id=”104″ target=”_blank”]
ハイドロキノンとは
ハイドロキノンは、長年写真現像の際に還元剤として用いられてきた物質です。
イチゴやコーヒー、紅茶にも含まれており、人工的にはベンゾキノンという有機化合物を亜硫酸で還元して生成されます。
高い還元性を持つことが特徴で、かつて写真現像の仕事をしていた人たちの手が白くなることから、皮膚の美白効果が注目されました。
ハイドロキノン入りの化粧品は肌の漂白剤として人気を博しましたが、日本国内で入手するには医師の処方が必要でした。
しかし、2001年の薬事法改正により今ではハイドロキノンが配合された化粧品を自由に購入することができます。
ハイドロキノンの美白効果
紫外線や不規則な生活習慣などが原因となり、皮膚の奥底にある基底層と呼ばれる部分に存在するチロシナーゼという酵素がメラノサイトに作用します。
すると、メラノサイトはメラニンという物質に変わり、このメラニンが肌の表層に染み出して蓄積することでシミなどの色素沈着を起こすのです。
ハイドロキノンは肌の漂白剤と言われるほど高い美白効果持ちます。
世の中には様々な美白効果を持つ成分が売り出されていますが、ハイドロキノンはどのようなメカニズムで美白効果を発揮するのでしょうか。
メラノサイトの減少
ハイドロキノンは、メラニンの元となるメラノサイトに直接作用して、その数を減少させる効果があります。
酸化酵素チロシナーゼを抑制
ハイドロキノンは、メラノサイトがメラニンに変化するために必要な酵素であるチロシナーゼの働きを妨げます。
メラノサイトの中にあるチロシンというアミノ酸の一種がチロシナーゼという酵素によってドーパキノンになります。
メラニンはドーパキノンがいくつも連なってできたものです。
つまり、チロシナーゼの働きが弱くなるとチロシンからドーパキノンが作られなくなり、結果としてメラニンの生成も減少するのです。
還元作用
ハイドロキノンは優れた還元性を持つことが最大の特徴です。
一度、皮膚の奥にできてしまったメラニンは紫外線や活性酸素にさらされると、どんどん黒くなる性質があります。
これは、メラニンが刺激によって酸化するためです。
元来、写真現像の還元剤として使用されていたハイドロキノンには還元作用がありますから、酸化されて黒く濃くなったメラニンを薄くする効果があるのです。
このように、ハイドロキノンには、色素沈着の予防だけでなく、すでにできてしまった色素沈着を薄くする効果があります。
しかし、ハイドロキノンの効果は肌の表層の角質までにしか及ばず、皮膚の奥にできた色素沈着には効果が薄いものです。
シミの種類によっては効果が見られないものがありますので注意しましょう。
ハイドロキノンの副作用
ハイドロキノンは美白効果に優れている一方、いくつかの副作用があります。
シミをさらに悪化させてしまうこともあり、慎重に使用しなければなりません。
そのためにもどのような副作用が生じるのか、正しく知りましょう。
炎症
ハイドロキノンは効果が強い一方で、体質によって肌に合わない人はアレルギー様の症状を起こすことがあります。
また、肌の許容を超えた高濃度のハイドロキノンを使用した場合にも炎症が生じ、肌が赤く熱感を伴ってヒリヒリします。
さらに、ハイドロキノンは空気中で非常に酸化されやすい物質です。
酸化すると生成されるベンジキノンという物質が肌にダメージを与えることが知られています。
ハイドロキノンを使用したことで生じる肌の炎症は、時間が経てば自然によくなることがほとんどです。
しかし、無理して使用を続けて炎症が繰り返されると、肌の角質にダメージを与え、乾燥肌やしわの原因になりますので注意しましょう。
シミの悪化
ハイドロキノンによる炎症は、メラノーマの働きを活発にしてさらなる色素沈着を起こすことがあります。
また、広範囲にハイドロキノンを使用すると、肌全体が白くなって相対的にシミが目立ってしまうこともあります。
白斑
ハイドロキノンはメラノサイトに直接作用するため、長期間使用するとその部分のメラノサイトが働かなくなってしまい、そこだけ色素が全く作られず、白く浮き上がった斑点のようになってしまうことがあります。
特に高濃度のハイドロキノンに現れやすい副作用です。
老化や癌化
ハイドロキノンは、皮膚を紫外線から守る重要な働きをするメラノサイトの活性を抑制します。
そのため皮膚のバリアが十分に働いていない状態であり、肌にダメージを与えて老化を促すだけでなく、長期的には皮膚がんを誘発する危険があります。
ハイドロキノンの副作用を予防するポイント
ハイドロキノンにはいくつかの副作用があります。
しかし、その効果は素晴らしいもので、シミに悩む多くの女性に希望を与えてきました。
ハイドロキノンは使い方に注意すれば、副作用を防ぐこともできます。
ここでは、副作用を予防するためのポイントを解説します。
最初から大量、高濃度に挑戦しない
ハイドロキノンは体質によって肌に合わなかったり、アレルギーを起こす人もいます。
最初に使用するときには、いきなり高濃度のものを大量に使用せず、低濃度のものをごく限られた部分にだけ使用するようにしましょう。
また、使用後に赤みやヒリヒリ感がある場合にはすぐに洗い流して使用を中止し、適切な使い方を医師や薬剤師に相談するとよいでしょう。
最適な環境で保存する
ハイドロキノンは非常に安定性が悪い物質です。
空気中で容易に酸化し、肌に毒性のあるベンジキノンを産生します。
化粧品の含有成分としてヒドロキノンが使用されている場合は、防酸化剤などが使われていますが他の化粧品より圧倒的に劣化しやすいです。
- 使用後はしっかり蓋を閉じる
- 少量に小分けされたタイプのものを使用する
などの対策をするとよいでしょう。
また、ハイドロキノンは酸化によって黒っぽくなりますので、劣化してしまったものは無理に使用するのは控えて下さい。
しつこく使わない
ハイドロキノンの美白効果は素晴らしいものです。
シミが薄くなると、嬉しくなってついつい完璧に消えることを期待してしまうものです。
しかし、シミが十分薄くなったのに同じ部位にしつこく塗り続けていると、白斑や皮膚へのダメージにつながります。
完璧を目指さずに、適度な使用を心がけましょう。
肌のケアをおこたらないこと
ハイドロキノンには保湿効果はありません。
ハイドロキノンの刺激によって角質の水分が奪われることがありますから、保湿対策はしっかり行いましょう。
また、紫外線によるダメージを受けやすい状態ですから、紫外線対策はいつも以上に慎重に行うべきです。
ハイドロキノンの効果が現れるまでの期間
ハイドロキノンの効果は個人差があり、その濃度によっても効果を実感できるまでの時間は異なります。
一般的には濃度が高い方が効果の現れるまでの時間が短いです。
うっすらとしたシミなら、10日から2週間で効果を実感できるでしょう。
濃いシミでは1~2か月はかかります。
しかし、効果が出ないからといってずっと使い続けるのは非常に危険です。
期待する効果が得られないときには、3か月を目安に使用中止を検討しましょう。
ハイドロキノンの濃度による効果の違い
ハイドロキノンにはいくつかの配合濃度があり、高濃度のものの方が効果は高いですが副作用の頻度の高くなります。
しかし、濃度が低いものは美白力も弱くなります。
自分の肌の状態や体質に合った濃度を選ぶようにしましょう。
配合濃度1~3%
2%までのハイドロキノンは市販の化粧品にも含有することができますから、比較的安全に使用できます。
肌へのダメージが少なく、最も安全に使用できる濃度です。
しかし、効果は低くなる分長期にわたって使用してしまう人もいるので注意が必要です。
配合濃度4~5%
肌へのダメージが多くなり、副作用が起こりやすくなります。
アレルギーが起こりやすいので、使用前はパッチテストというアレルギーを調べる検査を行うのがよいでしょう。
配合濃度6%以上
さらに濃いタイプです。
6%以上のものはいきなり使用開始するのではなく、5%以下のものがしばらく安全に使用できることを確認してからの方がよいです。
濃度が高くなればなるほど、白斑の発生率が高くなります。
ハイドロキノンはデリケートゾーンやバストトップに使える?
ハイドロキノンは、皮膚のメラニン合成を妨げ、還元作用を持つことで美白効果を発揮します。
デリケートゾーンやバストトップの黒ずみは、メラニンの蓄積によるものです。
ですから、ハイドロキノンによってすでに沈着した黒ずみを薄くし、黒ずみを防ぐ効果が期待できます。
しかし、デリケートゾーンやバストトップは大部分が粘膜でできています。
粘膜は普通の表皮よりも刺激に弱くダメージを受けやすい部位です。
ハイドロキノンをデリケートゾーンやバストトップに使用するときは、低濃度のものにするか医師に相談してからにしましょう。
ハイドロキノンはニキビ跡・そばかす・ホクロに使える?
ハイドロキノンは、シミだけでなくニキビ跡の色素沈着やそばかすにも効果を発揮します。
しかしいずれのケースでも、肌の奥深くまで浸透している色素沈着には劇的な効果は得られません。
また、ホクロへの効果は様々です。
一般的なホクロはメラニンが集合してできたもので、表面が膨らんでいます。
このようなホクロにはハイドロキノンの効果は弱いといわれています。
一方、肌の表面にできた日光黒子や老人性色素班などには効果が期待できます。
ハイドロキノンの規制緩和の流れと安全性
ハイドロキノンには60年以上の歴史があり、本来は写真の還元剤として使用されてきました。
美白効果が証明されてからは多くの化粧品に取り入れられたこともありましたが、白斑や皮膚がんを招く恐れがあるため、昭和30年ころから皮膚科などで医師の処方がなければ入手できない「医薬品」となりました。
その後、2001年に薬事法が改正され、2%未満の濃度であれば市販の化粧品にも含有できるようになりました。
現在では、多くの会社からハイドロキノン入りの化粧品が販売されています。
しかし、ヨーロッパなどの一部では未だに市販が禁じられている国もあります。
ハイドロキノン使用上の注意点
ハイドロキノンは今でこそ市販されるものですが、2001年以前は医師からの処方がないと購入できない薬でした。
当然副作用もあり、安全に使用するためには使用上の注意を守らなければなりません。
涼しい場所で保存
ハイドロキノンは非常に不安定な物質であり、温度が高くなると変性してしまうものがあります。
ベストなのは冷蔵庫での保管です。
市販のハイドロキノンは常温保管できるものもありますが、なるべく涼しいところで保管するようにしましょう。
使用期限に注意
市販品には防酸化剤や防腐剤などが配合され、使用期限が3か月程度のものもあります。
しかし、一般的に病院で処方される4%以上のハイドロキノンは、開封後1~2か月以内に使い切るようにしましょう。
他の薬との併用について
ハイドロキノンはトレチノインと併用することで、美白効果がさらに高まるといわれています。
これは、トレチノインのピーリング効果と肌のターンオーバー促進作用によって、ハイドロキノンの肌への浸透を高めるためです。
妊婦の使用について
ハイドロキノンは肌から吸収され、胎盤を通って赤ちゃんに渡ってしまう可能性が指摘されています。
ハイドロキノンは刺激が強く、特に生育過程の赤ちゃんには毒でしかありません。
妊娠中は使用しない方がよいでしょう。
まとめ
ハイドロキノンは美白効果に優れ、長年抱えていた肌の悩みを解決してくれることでしょう。
しかし、副作用も強く慎重に使用する必要があります。
副作用や使用方法の正しい知識を持って、雪のような白い肌を目指しましょう。
[getpost id=”104″ target=”_blank”]